11月17日旧ユーゴスラビア連邦コソボ自治州において1999年の紛争後初のコソボ全体レベルでの総選挙がおこなわれた。この選挙にたいしてはインターバンドから4名が欧州評議会(Council of Europe)の組織した国際選挙監視団(Council of Europe
Election Observation Mission II: CEEOM
II)に参加し、選挙当日の投票所での投票、そして開票過程の監視活動をおこなった。監視活動の概要、評価に関しては本号の阪口による章があつかっているのでそちらを参照していただきたいが、ここでは今回の選挙はおおむね成功であったと報告されていることだけに触れておく。目立った大掛かりな不正工作、脅迫行為もなく、また選挙運営自体も予想以上にスムーズに行われた。OSCEの選挙担当ディレクターのアーデン氏は選挙を評して「私のもっとも楽観的な予想を上回るものだった」とのべ、CEEOMIIの選挙後のレポートも昨年の選挙と比較して「より平和的な環境でおこなわれた」と結論している。選挙今回の選挙自体の争点はある意味非常にわかりやすいものであった。選挙戦には26の政党、団体、個人が参加したが、中心となったのは昨年の選挙での上位3党、穏健派イブラヒム・ルゴバ率いるLDK、旧KLAハシム・タチを推すPDK、同じく旧KLAのラムシュ・ハラディナイのAAKである。ところがその3党の掲げる政策綱領には実のところ現実的な違いはほとんどなく、結局のところ本当の争点というのは「だれにコソボを、(あるいはコソボ・アルバニア人を)代表する資格があるのか」という正統性をめぐるものであった。その上昨年の選挙で大勝したLDKの優位はかわらず、今回もやはり第1党となることが事前から予想されていた。こうしたことを踏まえた上で、各政党の得票率がどの程度変化するか、それによって昨年の地方選挙以降に各政党への支持がどの程度変化したかを見るのが今回の選挙であったといってよいだろう。もう1つの注目すべき点は今回参加を決めたセルビア人の動向であった。今回の選挙にあたってコソボ在住、あるいはセルビア本国、モンテネグロで国内避難民となっているセルビア人のうち多くは事前の選挙人登録をおこない、またセルビア人政党は連合政党をつくるなど選挙に参加できるいちおうの体制は出来上がっていた。しかし実際にセルビア人有権者が投票に参加するかどうかをめぐって直前までもめ、UNMiKがセルビア本国のコスタニッツァ政権から選挙への協力(セルビア人に投票するように呼びかけ)を取り付けたのは実に投票日のわずか2週間前であった。セルビア人有権者の投票率と、その結果セルビア人政党がどれだけ議席を獲得するかもコソボの将来を占う重要なファクターと位置付けられていた。開票の結果はLDKが得票率45.65%でトップ(議席47)。PDKが25.7%(同26)、AAKが7.83%(同8)。またセルビア人の政党連合(Coalition
for Return、セルビア語での略称:KP)はセルビア・モンテネグロにおける在外投票での圧倒的な得票で11.34%を獲得、すでにリザーブされていた10議席とあわせて22議席となり一躍第3政党となった。