第5次ミッション(アチェ和平市民社会会合 2005年6月4日-6月5日)

アチェ市民社会会合の意義

6月4日及び5日アチェ州都バンダアチェにて、アチェにおける和平プロセスに向けた市民社会の会合が開催され、インターバンドから松浦香恵事務局長代行が参加しました。会合には世界各地で活躍するアチェ人や和平問題に取り組んでいる団体などが集まり、アチェ和平合意に向けての市民社会としての取り組みについて話し合いました。

 今回の会合では、今後市民社会が和平プロセスにいかに関与していくかについて討論を行い、和平プロセスにおける市民社会の役割を再確認しました。8月の合意後は社会的な混乱が予想されるため、政府レベルの合意を市民社会がどのようにフォロー・アップして行くかが重要です。一方で国際社会の支援を集める意味でも、和平への関心の高いEU諸国や日本を中心に講演ツアーを行うことになりました。

 和平という政府レベルの課題に対し、政府だけでは対応できなくなっているという状況を前に、アジアの市民社会としての連帯を保ちつつ積極的にコミットしていくことが確認された、意義深い会合となりました。

 

 

現地の様子

一番被害の激しかったウレレ地区は、いまだに焼け野原でしたが、 少しずつでも復興に力を尽くす人々の姿を見ました。 橋げたができて、向かい側のサバン島に行く ボート乗り場ができていたのには、驚きました。アチェコーヒーを飲んでくつろぐ人の姿も見ました。また、海岸から2キロ以内の地区にテントをはってすんでいる人もいました。

市民社会会合は、2日間インドネシア法律扶助協会で行われました。アチェ市民社会の和平プロセスへのコミットメント、それに関する法律扶助協会をはじめとした参加者の動きがすばらしく、 数日間でそのメカニズムを作り出す扶助協会を中心とした現地NGOの動きに、 感銘を受け、改めてアチェの平和構築にいかに市民社会が重要なアクターであるか ということを再認識しました。 会議には、ロンドン、マレーシア、シンガポールにいるアチェ人も結集しました。

 

 

(1)経済復興、社会再建および長期的民主化プロセスの調整

津波被害は家屋やインフラを破壊し、多くの犠牲を生み出しただけでなく、住民の再定住、コミュニティの再建、生活再建から被災者の心的ケアまで、巨大で多様な課題をも作り出した。同時に、これまでも地域の自治権を巡って政府との対立の絶えなかった地域において、津波被害が新たな社会的不安定を生み出すことが想定される。

 

 このプロジェクトの包括的な取り組み、すなわち経済復興と社会再建を調和させ民主化プロセスを形成していくことによって、被災地のアチェ社会の長期的な復興と安定をもたらす。

 経済的社会的再建と同時に①津波によって生じた新たな社会問題②津波被害から人々が立ち直る意欲を持つまでの精神的なケア③復興・再建過程において発生した新たな社会問題④政府との対立構造の変化などを考慮にいれながら、インドネシア政府・国連機関・内外のNGOなどと協働して、津波被害からの経済再建と同時に社会再建を調和させ、被害住民の復興意欲を高め、長期的な民主化プロセスへの支援を行う。

 

各プロジェクトにおけるモニタリングを通じて、被災したアチェ社会の復興の現状を把握し具体的支援活動および政策提言を行い、またアチェ社会の自立再建努力を助けるために、現地NGOへの活動協力・教育啓蒙活動を行う。同時にジャカルタにてインドネシア政府、国連機関、外国およびインドネシアの民主化支援・人権関係NGOとの連絡・調整を行う。

 

 

(2)スマトラ沖津波により被災した漁民に対する生活再建支援(小規模融資供与による事業の起業支援、および収入増加プログラム)

津波によって生活の基盤を奪われ、人道的にも危機的状態にある被災者の生活が安定する。また、他の津波被災者の生活再建のモデルケースになる。また生活の安定により、武力闘争よりも民主的手段による平和プロセス構築を選択する機運が高まり、将来の地域の安定化に貢献する。 津波の被害を受けた地域の中で、APFが活動の基盤を持っている地域で、漁民を対象とした収入増加プロジェクトを実施する。約10家族をグループ化し、1000万~2500万ルピア(約11.3万円~28.4万円)を融資し、ボートや網、魚の運搬手段である車を共有できるようにする。その結果、効率の良い漁業が可能になり生活再建への寄与が可能になる。また、漁業の再興には、マングローブ開発が不可欠である。

さらに、それぞれの漁民が事業の多角化を進め、生活におけるリスクの低減を図れるような支援も行う。例えばさらなる小規模融資の活用や、漁業による収入の利用により小規模店舗の経営や手工芸品の製作・販売などを、それぞれの適性に応じて行っていく。また会計、営業、市場調査など、事業運営の方法などをアドバイスする。結果として、経済的な安定がもたらされるとともに、女性の活用、さらに自立が可能になる。

(3)スマトラ沖巨大津波により被災した児童への教育プロジェクトと児童の健全な発達を促すための教師育成プロジェクト、および女性のための小規模融資供与プロジェクト

①津波によって両親や親を失い、心に深い傷を負った子どもたちが、様々なイン フォーマル教育に参画することで生きる自信を取り戻し、かつ宗教的な配慮に基づいた教育プログラムによって心の平安を取り戻すことができる。また、アチェの教育環境においては、戒厳令下において学校が焼かれるなどの経験により、子どものみならず教師にも深い心の傷を負っているものが、少なくない。子どもの健全な発達を促すためのカウンセリングの手法や様々な学習プログラムの作成技術を教師が身につけることによって、学校教育の現場において、子どもの健全な精神の発達を促し支えることができる。

②女性の自立が困難なアチェ州の社会構造において、伴侶や子どもを亡くし生活の基盤を失った女性たちが、小規模融資供与を受けることで、自らの力で生活再建を行う機会を得ることができる。  PCCの活動の主要な目的は、子どもの権利の擁護、教育機会の提供などを通じ、子どもの社会参画の機会を推進し、自立や創造性を促し励ますことである。経済的な発展により影響を受けたストリートチルドレン、児童労働を強いられている子ども、漁村や農村の子どもたちや国内避難民の子どもたちに対し教育プログラムを行っている。スタッフのほかに50人の現地ボランティアによって運営されている。すでに実績のあるPCCでは、津波被災児童に対しても様々な教育プログラムが考えられ実施されているが、カメラを使用した「表現活動プログラム」が提案され、すでに実施された。津波によって恐怖を伴った経験を強いられた子どもたちに、コンパクトカメラを提供し、その状況説明を得日記風に書いて発表する。同じ地域の子どもたちが写真を撮影することで、感情を共有し、それを表現することで、自分たちの身近な人々やコミュニティーを再認識することができる。公教育だけでは十分に果たしえない、子どもの情緒の発達や表現活動を、様々なプログラムを通じて育成することができる。

さらに、アチェ州においては、戒厳令下において学校が焼かれるなどの経験により、深い心の傷や恐怖心を抱いている教師や子どもが多い。自らの感情を表現し、自由な表現活動を行うことは、津波の被害により二重の困難を強いられた子どもたちにとって、健全な精神の発達の観点から重要である。また、教師に対しては、子どもの健全な発達を促すためのカウンセリングの手法や様々な学習プログラムの作成技術を提供することによって、学校において教師が子どもの健全な精神の発達を促し支えることができる。

PCCでは、女性に対する小規模融資事業も行われており、クラフトなどによる収益事業も行われている。その活動の一環として、伴侶や子どもを亡くし、生活の基盤や生きる希望を失った女性たちに対し、小規模融資事業を行い、自らの力で生活再建をするためのプログラムを行う。以上のプログラムをコーディネートし実施するために、女性や子どもの教育分野で実務経験を持つ専門家を派遣する。