InterBandのOB・OGたち

InterBandは1992年の設立以来、世界各地で民主化や平和構築を進めるために様々な活動を行ってきました。
紛争予防や平和構築に関心のあるたくさんの人々がInterBandで経験を積み、現在世界中で活躍しています。
彼らInterBandのOB・OGたちの活動を紹介していきます。

 

 


安藤秀行さん [2008.2.25]

トップバッターはスーダンで活躍中の安藤秀行さんです。日本への一時帰国中に、お話を聞くことができました。まだまだ混乱が続いているダルフールですが、日本ではこれまでの資金協力に加えて自衛隊をPKOとして派遣するという動きも出てきています。近い将来、私たちにとってもっと身近な国になるかもしれません。

 

プロフィール

1971年生まれ。イギリスのブラッドフォード大学でMA in Conflict Resolutionを専攻。99年に難民を助ける会のインターンとしてコソボで活動。 2001年から2003年までインターバンドでプロジェクトコーディネーターとして活動。コソボ、カンボジア、パキスタン、東チモールで国際選挙監視活動をおこなう。 2004年には国連シエラレオネ派遣団に国連ボランティアとして参加。選挙支援活動を行う。2004年から2005年までやはり国連ボランティアとしてUNHCR(国連難民高等弁務官)のミャンマー事務所に勤務。現在はJPOとしてUNHCRのスーダン・ダルフール事務所に勤務。2001年から2003年までインターバンド在籍。

インターバンドで活動を始めたきっかけ

首藤先生の別のNGO(アフリカ平和再建委員会)にインターンとして関わっていたので、インターバンドとは以前からつながりがありました。本格的にかかわるようになったのは2001年に留学から帰国したあとで、コソボで行われる議会選挙でのインターバンドの選挙監視活動を現地でサポートしてほしいということで、お引き受けしました。コソボの現地の土地勘みたいなものは人道援助の経験からありましたが、活動のコーディネートをしたのは初めてだったので、とても緊張しながら現地に向かったことを覚えています。

メッセージ

インターバンドの選挙監視の活動では、主に長期の選挙監視員として、そしてコーディネーターとして活動しました。選挙監視の経験はなく、最初から現地で基本的には一人で活動するので、インタビューの仕方、レポートの書き方など、すべで手探り状態ではじめなければなりませんでした。自分なりに勉強したり、現地で一緒になった他国の選挙監視員の活動をみようみまねでまねてみたりと大変でした。けれどもその経験からいろいろ学ぶことができ、今の仕事をやる上での基礎と自信にもつながっていると思います。インターバンドはANFREL(Asian Network of Free Elections)の一員でもあるのでANFRELの選挙監視活動にも参加する機会があり、アジアの各国からの選挙監視員とともに活動をすることをできたのも非常に貴重な経験となりました。「はたして監視活動は意味があるのだろうか?」という疑問を、人権監視活動や選挙監視活動をしていると必ず聞かれるし、自分でも考えることになります。あるいは民主化や選挙ではたして紛争が解決されるのか、と考えることもあると思います。今は選挙のような民主化の制度よりもまず第一に紛争当事者の間での信頼醸成が重要だ、という考えのもと国連やNGOはさまざまな紛争解決の活動を手がけています。けれどこうした活動も「はたして紛争を経験した敵対する民族・国・地域の間に信頼の醸成など可能なのか」という自然な疑問を避けて通ることはできません。こうした活動に現在もかかわっている者として言えることは、方向は決して間違っていない、ということです。端的に言えば、こうしたさまざまな制度や活動が常に成果をあげることができないのは分かりきっていることですが、同時に今の人類の英知で考え出せる最善の方法がこれしかないのも事実です。こうした活動が100%の成果をもたらさないからといって、それらを否定することができるでしょうか? 過去半世紀以上の国連の活動、NGOの活動は「いかに紛争という悲劇を繰り返すことなく、利害の相対する国家、民族の対立を乗り越えるか」という壮大な実験と模索の歴史でもあります。この「実験」に自分がかかわることができるのを誇りに思いますし、その窓口を提供してくれたインターバンドにはとても感謝しています。皆さんもインターバンドの活動を通じて大きな「歴史」に参加してみませんか?

 

 


瀬谷ルミ子さん  [2008.5.21]

今回は、日本紛争予防センター(JCCP)事務局長の瀬谷ルミ子さんにインタビューしました。日本へ帰ってきた現在も、調査研究などで海外を飛び回って活躍されています。日本での研修や平和構築事業も積極的に行っているので、みなさんどこかでお会いしたことがあるのではないでしょうか。

 

インターバンドで活動を始めたきっかけ

大学生のときにルワンダを訪れたことを契機として、インターバンドとも関わりの深い、アフリカ平和再建委員会(ARC)でインターンシップとして活動し始めました。インターバンドとして初めて本格的な活動をしたのは、1999年のインドネシアの選挙監視からです。インドネシアのマドゥーラ島に派遣されて、選挙監視活動を行いました。選挙監視の経験は、初めての実務経験でもあったため、その後海外で仕事をするにあたって役立ちました。イギリスの大学院で紛争解決学を学んだ後、ARCがルワンダに現地事務所を設立するということで、ルワンダに派遣されました。ルワンダから帰国後、半年間インターバンドで働きました。その後、シエラレオネで国連ボランティアとして活動しました。

 

メッセージ

この分野は、実務での経験が何よりも重要だと思います。興味を持ったら、まず小さなことからでも行動を起こすことが重要ではないでしょうか。私はコピー機の使い方も分からない状態からインターンをはじめました。学生でも、社会人でも、自分なりに時間を見つけて主体的に関わる方法は、何かしら見つかると思います。そうして少しずつでも経験を積み重ねていくことが大切です。ただ大きな組織の一員としてそこに巻き込まれるのではなく、自分自身が一定の専門性を見につけ、NGOとしてでも、国連職員としてでも、日本政府の一員としてでも、どんなところでも働けるように実績を積むことが、主体的に自分のやりたいことを実践する基盤となります。NGOだから、政府だから、国連だからと軋轢を生むのではなく、共通の目的を見出して協働できるバランス感覚を身に付けている人は、どこでも活躍していると感じます。

私自身は、NGOからキャリアを始めて国連、外務省と携わってきましたが、もう一度市民社会の一員として、日本社会の一員として、何か活動したいという気持ちが強くあります。そうした考えの根底には、初期のインターバンドでの経験が影響している部分もあると思います。当時は、平和構築に関わる日本のNGOは希少で、ニュースレターもかなり内容の充実したものでした。現場経験と高レベルの研究と、同時に学べたことが貴重な経験となりました。